対人関係において、自分が他のメンバーの言動に対し、感じたこと、思ったことを伝える(自己開示する)ことをフィードバックと言います。今、このフィードバックとチーム経営の関係を集中して考えています。

1、フィードバックの効果
(1)自己の発見と成長
 私が他の人の言動について、思ったことを伝えることで、他の人は自分のクセや言動の影響について正確に把握できます。これはまさに「自分を知る」ということに他なりません。こうしたフィードバックをきちんと受け取れれば、次からは目標に向かってよりよい言動がとれるようになると考えられます。これはメンバーの成長といってよいでしょう。

(2)他者の成長の支援
 つまり、フィードバックは適切に用いられれば、メンバーの目標達成に対する言動がよりよいものになることを手助けする効果があります。

(3)効果的なチームの形成
 このようにグループメンバーが目標達成に障害となる互いのクセなどを、自由にフィードバックできれば、タブーが減り、相互のコミュニケーションがより自由に行いやすくなります。この結果、情報の共有や問題解決がよりスムーズに行いやすくなるのです。

2、フィードバックの注意点 批判と厳密に区分けする
 しかし、フィードバックをされる受け手の側は、フィードバックを自分に対する批判ととる可能性があります。実際、一方的な批判のような不適切なフィードバックが横行している場合、受け手は、自分を守る必要があるでしょう。
 ここから言えるのは、フィードバックとは、「管理されたコミュニケーション」であり、単なる批判と厳密に区分けして用いる必要があるということです。
 つまり、本当のフィードバックとは何かを知っておれば、正しくフィードバックされた際にきちんと受け取れるようになりますし、部下やメンバーに対し、成長を促す形で、フィードバックを行うこともできるようになります。

3、フィードバックの方法
 組織心理学者のエド・シャインによると、フィードバックは次のルールを守って行う必要があります。
①受け手と与え手に、達成しようとする目標が合意されていること。
フィードバックは、達成目標に受け手が到達しているかどうかについて示唆を与えるものでなければなりません。このケースでは、グループの有効性という目標が共有されていなければ、単なる批判になってしまいます。
②何のためのフィードバックなのかが明確であること
与え手の動機が明確だと、自分を助けてくれるものだと確信でき、受け取りやすくなります。
③一般的特徴、人間全体の特徴ではなく、特定の修正可能な行動に対しフィードバックすること。
人間は、自己の人格全体を否定するフィードバックは受け取れません。人格は帰られないからです。しかし特定の行動については修正可能で、フィードバックは受け取りやすくなります。
④あいまいな一般的表現でなく、具体的で明確な表現でフィードバックすること。
⑤肯定的評価や評価を含まない、記述的・中立的フィードバックを中心とすること。
⑥ただし、特定の状況における特定の行動に対しては、否定的フィードバックを与えることを差し控えないこと
⑦受け手が、フィードバックを受け止められるタイミングを選ぶこと

プロセス・コンサルテーション―援助関係を築くこと

プロセス・コンサルテーション―援助関係を築くこと

 こうしたルールがきちんと守られている時のみ、フィードバックは有効に働き、安全に私たちが成長できる「場」が作れると言えるでしょう。

4、博野の方法

 私自身は、他の人からフィードバックのコツとして次の4点を教わり、心がけています。

<ポイント>
1、そのフィードバックは自分のためか、その人・グループのためか判断する
 自分の自己満足のためなら言わない
2、今言うべきか、時期を待つべきか判断する(迷ったときは本人に聴く)
 その人が今そのフィードバックを受け取れるかどうか判断する
3、何回もその課題は現れる(あわてて言わず、データを集める)
 データをきちんと集め、確実になってからフィードバックする
4、上記で判断してからきちんと伝えきる