表題の小冊子をチーム経営のホームページからダウンロードできるようにしました。ここではさわりをお知らせしようと思います。ダウンロードはここから http://teamkeiei.com/report-buka.html

<リーダーのなすべきこと2>

(2) 部下がトライできる安全で守られた場を作る

 部下が体験学習法による成長サイクルを歩んでいくためには、何よりも自分の考えや新しい行動が受け入れられ、トライし、失敗しても受け入れられるという確信が必要になります。

 新しい考えや行動が拒否され、失敗が許容されない雰囲気の下では、部下は自分の身を守るために今までどおりの行動や指示待ちの受け身の行動に終始し、自分で考え、自分で動く自律性を身につけていかないからです。

・リーダーの承認行動

 部下にとって安全な環境を提供するのは何と言ってもリーダーです。みなさんにも、自分を心から受け入れ信じ、励まし、見てくれていて、心ある仕事は結果にかかわらずほめてくれるリーダーに出合った経験があるでしょう。こうした人の下では、私たちは失敗を素直に認め、修正し、新たな事にトライすることができます。
しかし、自分のことに関心を持ってくれず、何にトライしているのか見てくれず、結果しか見ないで叱責する上司では、私たちは新たなトライはしにくいでしょう。

少し厳しい言い方になりますが、リーダーの言動の影響が、部下が自律的に動けるかどうかの環境を決定づけます。言葉を変えるなら、あなたの部下が自律的に考え動かないなら、まずあなたの言動がそれを阻む影響を無意識に与えてはいないかを、一度確かめておく必要があります。(これは自分では難しいことなので、体験学習法を使った研修におけるフィードバックのトレーニングを通じて「自己の気づき」を得る必要があります)

・自由で守られた場の促進(グループプロセス・ファシリテーション*1)

 また、職場そのものが、自由で安全であり、なおかつ真剣に目標に向かっていく雰囲気を持っていると、部下は自律的にこの体験学習法のサイクルを歩んで行きやすくなります。
 こうした職場では、互いにフィードバックがしやすく、ふりかえりが効果的に行えますし、互いの経験・知識も提供しあえる協力関係があるので、適切な仮説が立てやすくなります。

 この様に体験学習法の学びは、個人的なものではなく、「場の力」によって促進することができるのです。リーダーは部下の育成のためにも、グループプロセス・ファシリテーションの導入によって、協力できる職場を築いていく必要があります。

*1「グループプロセス・ファシリテーション」については、小冊子『協力しあえる職場をいかに築くか』でくわしく説明しています。


・職場の方向性を共有

部下に自ら考え、自ら動くという自律性を持たせながら、自己の部門・組織が目標に向かってぶれずに進んでいけるようにするためには、自分の職場の運営指針(存在意義、大事にしたい価値観)や将来イメージ、さらには目標などを部下と共有化しておく必要があります。

逆にいえば、こうした方向性さえ合っていれば、あとは自分で考え動ける自由度を持てるようにしておくということです。これは部下がリーダーに仕えるのではなく、部下もリーダーも共有された方向性に向かう仲間として、伝えるべきことを伝え合う関係性になることを意味します。

これによって、リーダーの思惑(ここで育ってほしいというリーダーの願い)すら超えて、自分自身でさまざまな課題を見つけ、その課題に向けて自ら考え、自ら動く部下が育ってくることになります。