表題の小冊子をチーム経営のホームページからダウンロードできるようにしました。ここではさわりをお知らせしようと思います。ダウンロードはここから http://teamkeiei.com/report-buka.html

<リーダーのなすべきこと1>   

 環境変化に対応し、自ら考え、自ら動く部下を育てるためには、部下が体験学習法のサイクルを意識して、自律的に歩むことができるようにしなければなりません。そのための環境整備こそリーダーの役割といってよいでしょう。


(1) 「学びのファシリテーター

リーダーは、部下にとってとても重要な環境となります。リーダーがきちんと支援すれば、部下は安心して体験学習法による成長サイクルを自律的に歩もうとします。つまり、リーダーは部下が体験学習法による成長サイクル歩むよう促進(ファシリテート)する「学びのファシリテーター」となる必要があるのです。

・豊かな体験ができる場の創出

 まずリーダーは、部下が成長していくための「体験ができる場」を提供する必要があります。たとえば、部下によりよいリーダーに育ってほしいと考えているのなら、会議のファシリテーターやプロジェクトリーダーなど、いろいろな機会をとらえてリーダーシップを発揮できる場を部下に与える必要があります。

・体験のふりかえりとフィードバック

 次にリーダーは、部下の言動をよく見る必要があります。ここでよくやる間違いは、場(体験)を与えるだけ与えて、目を離してしまうことです。そして失敗すると飛んできてギャーギャーと指示をする。こうしたリーダーを経営学者のブランチャードは「カモメマネージャー」と言っていますが、これでは、部下は自分で考え、自分で動く事をやめてしまいます。

 ここでリーダーに必要なことは、部下とともに体験をふりかえり、良かった点・改善点・自分の意図どおりにいった点・いかなかった点などを指摘・分析することです。リーダーの支援(ファシリテート)によって、部下は自分の持ち味(自分特有の強み)や、自分のできているところと課題を冷静に見つめることができます。

 このときに必要なのが「フィードバック」です。ただ、フィードバックは誤って使うと批判と受けとられ、部下が防衛的になってしまう可能性もありますので、注意が必要です。

・仮説を立てる支援

 さて、次にリーダーは、部下が自分の意図どおりの結果をだせるような言動パターンを生み出すことを支援する必要があります。これは次回の体験においてどのように行動・発言するかの仮説を立てる作業と言ってもいいでしょう。

 ここでよくある間違いは、リーダーが、自分が成功したやり方、利用した知識をそのまま部下に押しつけてしまうことです。リーダーと部下は、パーソナリティも発言の影響力も、過去の経験や学びも異なります。また経営環境もリーダーの時とは同じではありません。したがって、リーダーの時は成功したやり方・知識も、部下がそのまま使って成功できるとは限らないのです。しかし一方、こうした懸念から、リーダーが自分の経験・知識をまったく部下に与えず、放任しておくことも間違いです。

 この段階でのリーダーは、次に部下がどのような行動・発言をするかの「仮説を立てる支援」を行う必要があります。仮説の候補(アイディア)はできるだけ多くあげる必要があるので、リーダーは経験・知識からアイディアを提供するのです。しかし、どのアイディアを仮説として採用するかは、部下自身に選ばせます。

 このように部下が自分の行動を自分で変容するという主体性を大事にしつつ、部下に対する適切な支援も与えることによって、自分で考え、自分で動く部下を育てることができるのです。

・体験学習法による学び方に習熟する
 
こうした体験学習法による成長サイクルを、部下が意識して歩むということは、自分自身の学びや成長の過程を自分自身が分析・研究できるようになることを意味します。つまり自分は実践者でもありますが、同時に学ぶ人であり研究者でもあることになります。

しかし、これは難しいことです。特にふりかえりのプロセスはどうしてもなおざりになりがちです。それだけにまずリーダー自身がこの体験学習法の成長サイクルを意識して歩めるようにならねばなりません。そのためには体験学習法による研修を取り入れることも一つの手でしょう。ふりかえりが習慣になることで、リーダーは、部下が体験学習のサイクルを歩むことを促進できるのです。



参考 フィードバックについて

1.フィードバックとは
関係の中で、他の人について気づいたことを伝えること
  例「あなたが、私が下を向いた時に、大丈夫?と聞いてくれたので、参加する気になった」
  「あなたの、それはダメという発言で、私は発言する気がなくなった 」
 <効果>
 ・他者からのフィードバック → 自分のクセや言動の影響について把握できる
 ・メンバー同士が目標達成に障害となるクセなどを、フィードバック
   =情報の共有や問題解決がよりスムーズに行いやすくなる

2.注意点 
受け手は批判、否定されるのではと恐れ、怖さ、身構え
 <フィードバックの条件>
(1) 受け手と与え手に、達成しようとする目標が合意されていること。
   例 ファシリテーターとして上達するため
(2) 一般的特徴、人間全体の特徴ではなく、特定の修正可能な行動に対し具体的で明確な表現で
  フィードバックすること。
   ×「あなた、ダメやな」 →どう直していいかわからない??
   ○「あなたは最初、自分がファシリテーターと言わなかったが、それで私はとまどった」
     →次回から修正できる!!
(3) 評価を含まない、事実のフィードバックを中心とすること。
   ×「あなた経営者失格だよ!」 →評価的フィードバック
○「あなたは、この会議の最初、・・と発言しましたね。」 →客観的事実
○「私は、その発言にとまどいました」 →私に起きた事実
(4) 受け手が、フィードバックを受け止められるタイミングを選ぶこと

3.フィードバックの仕方【重要】
(1) まず事実を共有する
 ・「あなたは会議で発言しませんでしたよね」
 <ポイント>推測、評価に走ってしまわない
(2) Iメッセージ(私を主語にして)で自分の感じたことを伝える
 ・「私はもっと発言してほしいなと感じました」 →私に起きた事実