表題の小冊子をチーム経営のホームページからダウンロードできるようにしました。ここではさわりをお知らせしようと思います。ダウンロードはここから http://teamkeiei.com/report-buka.html

 自ら考え、自ら動くことのできる部下は、どのように育つのでしょうか。少し理論的ですが、「学習理論」を踏まえて考えてみることにします。


(1) 伝統的学習方法とその限界

 多くの伝統的な学習方法(学校教育やスクール型の研修)は、「知識や技能をいかに効率的に習得させるか」という考え方を前提にしています。たしかに、簿記や旋盤など仕事に直接かかわり、「問題解決の方法」が明確な知識・スキルの場合(たとえば簿記であれば記帳のしかた)には、こうした学び方は効果的でしょう。

しかし、常に変化する経営環境への対応、たとえば「顧客ニーズをつかみ、それに応えて提案する」というような場合、これらの知識・スキルを学校形式で学んでも、それを現場で使うことは難しいでしょう。それはこの学習方法に次のような限界があるからです。
 
≪伝統的学習方法の限界≫
1、「環境変化」が考慮されていない
 知識・スキルを使えば必ず課題が解決できる場合、つまり環境が一定の場合には有効です。しかし、環境が変化し、それに対応した問題解決方法(知識やノウハウ)を自分で考え選び、行動する力は養えません
2、「現場」が考慮されていない
 学校形式で学ぶ知識・スキルはとても抽象度が高いので、今抱えているこの現場や状況でどのように使えるのかについては教えてくれません。
3、「私」が考慮されていない
 学習する人は、これまで培ってきた知識・経験・パーソナリティ・対人関係の持ち方などが一人ひとり違います。たとえばリーダーシップでも営業でも、「自分」の相手への影響力を考慮する必要がありますが、伝統的な学び方ではこれは難しいのです。

 つまり、「いま・ここの」現場において、部下という1人の人間が、環境変化にあわせて、自分で考え、自分で対応策を編み出して、自分で動けるようになるためには、伝統的学習方法は著しく限界があるといっていいでしょう。つまりスクール型の集合研修だけでは、自ら考え、自ら動くことのできる部下は育たないと言えます。

(2) OJTとその限界

かつて、部下の指導において、OJT(On-the-job Training)の重要性が盛んに言われました。現代においても、実践の中で仕事を学ぶOJTは重要であると考えられます。
 しかし、OJTにも下記のような限界があり、これだけでは、自ら考え、自ら動くことのできる部下は育たないと考えられます。

≪OJTの限界≫
1、今、職場で行われている仕事が中心
 多くのOJTは、いま職場で現に行われている業務を習得するために行われています。これだけでは、変化を自らつかみ、自分で考え、対応する能動性をもった人材は育ちません。
2、リーダーや同僚がどのように支援するかが不明確
 多くのOJTでは、リーダーや同僚がどのようにメンバーの学びを支援すればよいのか(いつのタイミングで、どのような支援を)が不明確でした。このため、放任や過干渉(お説教)などが生じる原因になってきました。