また昨日の続きです。ラボラトリー・メソッドがどのような学びの理論に裏付けられているかの解説のまとめです。でも少し長すぎるかな?

・学習に対するラボラトリ的アプローチ
@さまざまなアプローチから関連のある側面を引き出し、学習を促進するための統合的な社会技術学のモデルを引き出す
@教育的諸機能が混乱した分離状態にあることに対する1つの文化的反応=トレーニング・ラボラトリの発達
@つぎはぎの折衷主義ではない
@概念の選択と統合=追求されるべき学習の種類と質のついての一定の目標や価値に関する仮説に基づく
・外部的観察者の混乱(内部の実践者の多くの葛藤)
=学習の学問分野と関わることから発生
@トレーニング・ラボラトリ=学校か診療所か?
@民主的価値観への内在化された同意を発達させる試み?個人の苦境を診断し処理する科学的態度を育む?社会科学の諸概念を社会的実践の場によりよく使用する試み?
@社会化の十分でない組織の人々の再社会化に貢献する試み?
→すべての機能を果たしている
@内部のスタッフ=自分の専門分野中心=葛藤

<定型的学校教育とそれに関する学習理論>
@多くの伝統的学校教育を貫く前提=固定化した文化的環境、この環境にうまく対処する情報・技能をまだ習得していない可塑性に富んだ学習者
@学習=学習者がそのような情報・技能を習得する過程→学習者の行動に測定可能な変化が見られる
@ソーンダイク、ハル、ダスリーなどの学習心理学者によって発展
@スキナ―のティーチングマシーンモデル

@ラボラトリ法=総括的学習観
@学習=学習者と環境とのやりとり、または相互交渉=学習者と環境はいずれも固定されたものではなく、共に変容する
学習心理学のモデルがラボラトリで重要でないことはない
例 強化とフィードバック
@「正しい反応」は正の強化を受け、学習者の反応レパートリーに定着
 「誤った反応」は負の強化を受けて消去されやすい
=ラボラトリはこうした強化機能を果たす媒体としての「他者」を提供する
@いかなる反応が正しく、適切か?
=ラボラトリ・グループは成員の反応と集団の業績とを測定することのできる標準の公式化を目指して機能しなければならない
=適切さの諸基準に関する数多くの個人的学習は、こうした過程の中でなされる
@相互に満足しうる適切さの標準の設定には、互いが互いの「環境」となる協働的相互交渉が必要。=刺激と反応とは互いに供給しあうもの
@ラボラトリ=人々が学習者でもあるとともに、他者に対する環境としても機能
→刺激と反応が相互に調整し合うように刺激と反応の適切さをはかる標準ができる

@従来の学習理論=反応の正しさ=教師や文化、マシーン・プログラマーが決定

@学習者の探索反応の効果に関する即時的なフィードバックの強力な効果
=学習集団が、反応をさし控えたり、歪曲する要因を識別し、かつ処理して、反応の抑制や歪曲を解消させ、フィードバックをより瞬間的で信頼性の高いものとするよう助力を提供すること
@学習集団に、より効果的なフィードバックシステムを作り上げる
=妥当な学習が行われるための1つの条件
=現実に直面することの精神衛生上の価値と信頼度の高いコミュニケーションの持つ民主的価値に奉仕

<精神医学とカウンセリング―パーソナリティ理論>
・カウンセリング的面接によって行動の変化を誘発する効果的方法には共通点
=いくつかはラボラトリ法の中に組み込まれている
@カウンセリング過程で進行する学習=「再学習」(過去の間違った学習の矯正)
@過去の学習は現在の学習場面の内に力動的に機能する。=特に学習教材が自他の行動である時
@過去の学習=面接過程においてさまざまな仕方で自らをあらわす
→学習者に対して他者の行動が与える刺激を、学習者の自己維持の要求に役立つようなしかたで形作る傾向
=他者の行動や意図に対する学習者の認知が歪曲される恐れ
精神科医、カウンセラー=学習者を助けて、こうした歪みが自己についての学習への1つの主要な通路としての意味を持つことを、学習者が洞察できるようにする
@過去の学習=他者の側からおこされる変化の誘発に対する抵抗として働く
→カウンセラーや精神科医=これらの抵抗が自己理解の重要な門戸であることを学習者が認識するよう励ます傾向

・認知の歪みや抵抗への重視=ラボラトリ法による学習過程にも組み込まれている
@自己に対する理解が学習の目標となる=社会的実在に適切に対処するのに不可欠な先行過程
@ポイント=変化に対する彼らの抵抗=自分の特徴である要求・感情・価値を理解する1つの方法であることを熟考するように励まし促す
精神科医、カウンセラー=メンバーと自分自身との関係に集中
例 理由なしにカウンセラーに不信感→これを検討=事実に基づいた関係が樹立、関係そのものに含まれる典型的な困難を洞察
@ラボラトリでも学習者と援助者の関係は、再学習の過程における1つの主要な内容
@この関係の質=再学習過程に必要なコミュニケーション、自己開示の条件として機能
例 学習者がカウンセラーを信頼しない=コミュニケーションは抑制、再学習を左右する重要な資料は利用できなくなる
@ラボラトリ法を用いる人=学習の多くが一群の学習者の中で生起する
=研修内部の学習者相互間の関係に同じように関心を持つ
@相互的援助をよしとする標準は、集団自身の手によって、集団内部に樹立されねばならない

<社会化と再社会化>
・人間の社会化のドラマ=理想的には依存の状態から自律と相互依存の状態への移行
=両親の子どもから、子どもの両親への移行
@人間の発達に関する1つの座標軸=最初は権威への服従者として、後には権威の担い手として権威関係を処理する能力の成長
@青年期 両親の権威に対抗するための盾=家庭外の仲間集団。こうした仲間関係が仕事や市民生活や遊び、教育、宗教など個人生活に浸透
@人間の発達は、仲間関係、権威関係との複雑な相互作用を通じて進行
@成熟した自律とは関係からの独立と同じでない
=仲間関係、権威関係を変化させるという方向に向かって現実志向的に機能する能力
=遭遇した諸問題を自己・他者の保全と成長を維持・向上させるように処理する能力

・社会化のドラマとラボラトリでの学習に関連付けるもの
1、依存から相互依存における自律への移行には、危機的位相(フェーズ)がある
=不十分にしか達成されていない社会化の領域を成人期に持ち込む(権威関係、仲間関係)
@ラボラトリでの経験 他者に処する自己の行動戦略の再吟味
=青年期においてなされた主体性、世界観、個人的充足感に関する決定が露呈しやすい
@参加者たちを支持して再吟味しやすくするため、集団からの情緒的支持与えられる

2、社会の加速度的変化=再社会化が成人に対する絶えざる要求に
@各自が自分の再社会化の問題の意識的な処理方法を学習し、こうした問題に直面するのを助けるべく開発された特殊な資源をも、意識的に利用する方法の学習必要
@ラボラトリ 上記の問題をいっそう客観的、合理的に処理していくための自分の仕方を改善できるよう援助を受けられる。(また援助を与える)

<小集団の理論と集団心理療法
・子どもの社会化=集団成員性の取得の問題が重要(自己の価値志向、他者への基本的態度、人間関係の場で自らを処していく基本的様式)
@再社会化=集団内における成員性の発達が含まれる
@ラボラトリの集団=外の集団とは違う集団標準
=ラボラトリ法では集団作りへの学習者たちの参加を強調(自分たちで集団を作るので、成員性が重要になる)
@学習者の内に変化を誘導する不調和=ラボラトリの学習集団が持つ標準の要求と他の成員性が持つ要求の間に存する不調和
=メンバーの現実の集団、準拠集団との標準の違いから生じる
@トレーナー ラボラトリが促進するこうした葛藤に、学習者たちが直面するようはげましを与える。また学習者たちが葛藤を総合的に解決する方法を探し求める際に、葛藤を生の状態に保っておくため、情緒的支持と知的支持を与え、学習者が早急に葛藤を拒否するのを思いとどまらせようとする
@ラボラトリ=学習集団と、別の目的をもった諸集団との標準の差による葛藤の発生
例 ラボラトリの非現実性、職場集団の持つ現実性
→「ラボラトリの外では役立たない!!」
@標準の矛盾に直面=ラボラトリ学習を可能にしている諸条件についての生の知識を入手
→学習を可能にしている諸条件へのコミット=他の集団でも活用可能=学習転移

心理療法の恩恵
@集団心理治療者のクライアントとラボラトリ・トレーナーのクライアントの違い
@前者=患者=意味ある関係において、普通以下の異常な形でしか機能しえない。
@集団心理治療の目標=正常な機能に到達、回復させること
@ラボラトリのクライアント=1つの集団。
@トレーナーの基本的関係=成員すべてに対して、1つの効果的な学習環境となるべく努力している集団に対し、コンサルタントとしての関係に立つこと
=中心的課題は集団が個人の学習だけではなく、共通の学習をも支えてゆけるように、より適切な機能を発揮できるように集団と共に活動すること
@ただ、集団の中の個人の困難性を診断する場合には、個人の人格的力動を理解する必要

<インターシステム理論―組織およびコミュニティに対するコンサルテーション>
・ラボラトリ 当初は官僚制組織に類似
=当初はスタッフに関心が集中。参加者はあらかじめ骨格の定められた組織に来る
→スタッフ=ラボラトリという組織の「ライン」リーダーとみなされる
=権威的人物、または心理治療者、研究者

・参加者、スタッフの関係がはっきり類別=その過程で示される投影的資料は、組織の権威、リーダーシップ、個人と組織の関係などの重要な学習材料に
→この分析=他の組織場面に対して転移可能な学習
@主要な問題点 ラボラトリ・トレーナー=組織論に著しく頼っている=組織生活の中でのコンサル、スタッフの役割を参考にしている

・システム理論=ラボラトリの設計に一つの重要な役割を演じている
@人間組織の多くのレベルに存在する(個人システムの間、集団システムの間、参加者・スタッフの集団システムの間)の対立・葛藤・混乱がすべて学習に利用される
@ラボラトリ=官僚組織+インフォーマル=コミュニティ
@ラボラトリの中のコミュニティ・オーガニゼーションのねらい=個個人ないし派閥が、組織化された集団活動に巻き込まれることを予防すること
=インフォーマルな活動で行った思索、会話内容を他の人に報告する義務なし
@非公式のコミュニティ構造を学習目的に結びつけるいくつかの回路は用意される
=2人一組になっておこなう短い面接
→今考え、感じている事をまとめ、グループにどのような質問を持ちこんだらよいか助言しあう
@個別のコンサルテーションの機会が匿名で
@ラボラトリの不満をスタッフに伝えることができる回路

・Tグループに向けて発達する下位集団の強い忠誠心を学習目的に利用する
@競争、協働のいずれの文脈においてもエンカウンターさせるようにお膳立て
=行動の資料が収集→競争・協働のシステム間のダイナミクスの諸法則が導き出される

・成功しているラボラトリ
@自己と他者についての学習は、行動の観察と分析を通じて行うのがよいというコミュニティ全体の標準が発達
→インフォーマルな交際の中で生ずる出来事を公式の集団生活に持ち込み、学習目的を支えるのに役立てること多い。
@非公式事態について素人が心理学的な解釈を下す事の危険性を防ぐ方法
?責任あるフィードバックと無責任なそれを公式カリキュラム実施の初期に区別
?メンバーが集団の中で自己を露呈しすぎることに対する、社会的に強化された抵抗の役割を果たすような派閥集団の形成を正当化する

<アクション・リサーチと科学的方法論>
・ラボラトリ法の提唱者 リサーチ=学習結果に到達するための1つの過程
@リサーチ=知識のフロンティアに自らいどんで、そこでの事象に知的統制を試みる1つの学習過程
@=リサーチャーが学習しなければならない問題を明確にし、これに関連のある学習を発見し、検証するための方法を工夫していくことに、自ら率先して当たるところの学習過程
・学習場面は、自分自身の問題や他者との関係に関する諸問題を明確化するための設定
@問題に対する解答は与えられていない=解答はわかっていない
@資源=問題についての思考を助ける概念的道具の形で、さらにフィードバックの過程および、「検証」過程の一部として提供
@合意による妥当化の方法=到達した合意をテストする過程や合意を形成するにいたる思考、コミュニケーションの質は集団によって絶えず批判され、吟味される

・集団による探求
@多少とも統制された問題事態を処理する方法がいくつかある場合
=それらの効果は集められた資料に基づいて評価される
@そうした技術実習セッションは2通りの学習用具をテストする
?人間行動を理解するのに有用な概念
?探求の用具=資料収集の方法 観察法、現場実験の計画方法
@研究計画=参加者が問題解決の過程において被験者と実験者の両者になることを要求される研修計画の中に組み込まれること多い。
→参加者=探求の原理の中で学習を継続できる
?行為―モデル用具

・学習場面を作り出すこと、管理運営についての主張
@科学的方法の規範と科学哲学の両者から導きだされる
→こうした主張や見解が、ラボラトリの中で形をとったものがアクション・リサーチ
=実践的問題を明らかにし解決する場合の科学的方法論の1つの応用的試み
=個人と社会の計画的変容の過程
=行為の計画と結果の評価における共同研究の質に注意を向けた学習の1過程

<民主的な実践と民主的な理論>
・民主的な諸概念 ラボラトリの目標、内容などを選択する際の「記述」概念でもあり、価値への主体的関与を作りだすものとしても機能
@科学的方法(価値)=知識の形成とその検証に関連した機能を持つ
 民主的方法=個人・集団の行動を管理し統制することに関連した機能
@上記2つの価値観は異なる秩序を持つが、ラボラトリ開発者はそれらの類似点を見る

・民主主義=他者と共同生活する上での問題を協力して解決できる潜在能力を持つとする
@共通の問題は、その解決によって影響を受ける人々の参加がなければうまく解決できないという仮定
@集団的取り決め、判断を最終的に決定する手続き=合意による妥当化の手続き
@ただし合意がいつも正しいとは想定していない=誤謬をおかしうる
=多数派、集団そのものの横暴や誤謬を防ぐために、いくつかの重要な安全弁
例 集団があらかじめ意思決定に関する情報を準備すること
  価値に関する特殊な枠組みに基づいて、関連情報を吟味・解釈する方向において他者に影響を与えようと試みる成員各自の責任

・民主主義=自己に影響をもたらす意思決定の諸過程に平等に参加する自由が各人にある
@法律との関連
@経済的、社会的、心理的条件に本来付きまとう自由な参加の阻害要因を除去すること

・実験的手続きによる実証の精神=民主主義のイデオロギーに浸透
@代議員=権力行使に対し他者から常に評価
@投票した人(権限を委託した人)の権利=一時的合意が将来の選択に対する足かせにならないようにする安全弁の役割

・社会的統制の一方法としての民主主義の核心である合意による妥当化の手続きと誤った合意を防ぐ安全弁
@=人々の学習する権利と責任についての、学習を促進する方法についての仮説でもある
@人々は集団による決定が新しい予期しなかった問題を招くことを学ぶ必要
@妥当な意思決定に必要な情報を集め、それを提供することを学ぶ必要
@証拠の解釈、証拠と適合した形式・配置を作りだす際に、他者と一緒にそれに参加することを学ぶ必要
=価値の葛藤や勢力の抗争を直視し、建設的に処理することを意味
@事物を解釈する際に既成のやり方にとらわれていないかを吟味=新しい情報や改めて明確化された目標ならびに価値観とよりよく調和する新たな方法を目指し、実験的に行動することを学ぶ必要
→どれ一つをとっても自然に達成されるものはない

・社会=さまざまな利益団体が組み合わさってできた複合体
@民主的考え方は広がる、でも関連技術は計画的指導なしで学ばれる
→ラボラトリ=参加者を助けてこうした矛盾に直面させる

・ポイント 民主的方法論が科学的方法論ときわめて類似のもの
@達成された結果の合意による妥当化に窮極的に依存
@誤った合意が実践に移されることを防ぐ安全弁をつくりあげる
@共に実験的アプローチ
@関連ある個人的な経験やさまざまな解釈様式から可能な限り多くのものを引き出し目指す学習結果に組み入れ
@妥当化の公的な過程

・両者の差異
@民主的方法論 社会的統制の諸様式を作りだし検討する過程にも拡大適用
=政策決定に関連する知識の妥当化
=関連した道徳や価値観の妥当化も含む必要
@科学的方法論 知識の妥当化に重点

・ラボラトリ=先行する価値選択が学習の妨げになると思われる領域で学習を働きかける
@自らの認知能力だけでなく、どのような価値選択を持っているかをさらけだし、公の場の吟味にゆだね、個人の再構成を行うことができるように援助する必要
@ラボラトリの民主的方法に対するかかわりは科学的方法論に対するよりもいっそう包括的
@ラボラトリ=価値への関与は妥当な知識に基礎づけられることが必要と信じる
=科学的知識と方法論の使用を織り込んだ学習条件を確立すること
@ラボラトリの中心目的=さまざまの制度的環境における人間問題の処理に、広く民主的・科学的方法論を活用すること