先日、取引先でおもしろい体験をしました。

 社長と顧問の会計事務所さんのメンバー2人、それと私の4人の会議での出来事です。社長は社内にお金が残る体制を築くための子会社設立を考えておられ、税理士さんに相談されている場面です。

 ところが税理士さんは、こうした提案にあまり乗り気でなく「社員のモチベーションが下がるのでは」と消極的です。一方社長さんは、子会社設立がいかに税務上の利益があるかを力説されます。

 こうした中、私はその税理士の先生がなぜ、乗り気になれないかをしつこく聴きました。最初はなかなか言葉としては説得力ある答えはでてこなかったのですが、最後にこれまでの25年以上にわたる経験の中で、節税用のペーパーカンパニーを設立し、税務対策した場合、社員がどうしても社長だけが得しているように曲解し、モチベーションを失う場面が多かったという経験知をお話になりました。

 また社長も、聞いていく中で、決して個人的利益ではなく会社を大きくするための投資の原資や借り入れ保証の原資としてお金を残す必要を考えておられ、それは最終的には組織や社員のためであったのです。

 こうして、節税が目的の子会社設立ではなく、社員への権限委譲、モチベーションアップ、そして将来の新たな展開のための子会社化の方向性がでてきました。この結論には税理士の先生もとても満足だったようです。

 私はあらためて表面の意見ではなく、その奥底に隠れた意図、暗黙知を引き出すことが重要かを知りました。