2007年5月〜6月にかけて、3日間にわたってファシリテーター養成講座を開催しました。参加者は定員いっぱいの14名、スタッフが4名の18人で、学びを進めました。(秋季講座について http://teamkeiei.com/modules/eguide/event.php?eid=26) 

eichen2007-06-26


今回は、事前申し込みをいただいていた参加者の特徴を踏まえ、あらかじめスタッフ間で講座全体のねらいを決めて臨みました。それは以下のようなものです。

<今回のファシリテーター養成講座のねらい>
「自由に安心して話し合える場」
「目標に向かって楽しく、真剣に話し合える場」を創っていくために、
かかわりの中で、起きてくる心の動きを感じ、
効果的に働きかけるファシリテーターになる

 ここには次のような意味が込められています。
・知恵とチカラをあわせるためには、「自由に安心して話し合える場」 、「目標に向かって楽しく、真剣に話し合える場」が必要である。
・こうした場を作っていくには、まず参加者がいろいろな実習をする中で起きてくる場=「かかわりの中で、起きてくる心の動き」を感じる力を養成する必要がある。
・こうした場に働きかけ、自由に安心して話し合える場」 、「目標に向かって楽しく、真剣に話し合える場」を促進するのがファシリテーターの役割である

 ファシリテーターは、人間として場に関わり、その一挙一動足で場に影響を与えます。つまりファシリテーションとは単なるスキルではないといっていいと思います。ここに気付いていただけるといいなあとスタッフ側は期待していました。
そして自分らしいファシリテーターのあり方を探るのも、この講座のねらいの一つです。

◎1日目 「場を感じる」

 というわけで、1日目はまず、いま、ここでどのような場が生じているかを感じ取ってもらうことからスタートしました。
 まず場=グループプロセス(目標共有、規範、雰囲気、決まり方など)とは何かを学んだあと、参加者がグループに分かれて、課題を行う体験学習をしました。そしてそれをふりかえる中で、そこで生じた「場」について気づいていきました。こうした体験学習は初めての方もおられましたが、とても強い印象を与えたようです。

 それから、こうした場を知恵とチカラがあわせられるように促進する、ファシリテーターの役割を学びました。それは以下のようなものです。

<自由で守られた場の促進>
1、聞き役、まとめ役    中立的な立場で意見をよくきき、まとめ、支持
2、促し役          質問したり、発言していない人に発言を促す
3、保護者役        メンバーを守る
4、ムードメーカー役    雰囲気に働きかけ 楽しそうに、ユーモア
5、場の学びの促進役    場に気付き、規範を変える 
<目標に向かって真剣に話し合える場>
1、リーダー役      目標の重要性を説き、圧力をかける
2、進行役      「何を、どのように話すのか」提案
3、意思決定役       質の高い意思決定を目指す。合意形成ができる
4、タイムキーパー役    時間を管理する
5、記録役         場の議論の流れと結論がわかるように記録する



 そして実際に、メンバーがそれぞれの役割を果たすことで、どのように場が変わっていくかを感じ取る体験学習を行いました。ここでメンバーはファシリテーターはすべての役割を果たす必要はなく、場に欠けている役割を補うものなのだという気付きを得たようです。

 この日の終了後、参加者は自分の組織の会議でどのような場が生じているかの診断をしました。これも学びになったようです。

◎2日目 「場を促進する、場をデザインする」

 2日目は1日目で学んだ、ファシリテータースキルについて実習を交えて一つ一つ学んで行きました。例えば聞き役・まとめ役として「傾聴と要約」の実習を行い、促し役として「自己開示」の実習を行いました。詳細は以下のとおりです。

<自由で守られた場の促進>
1、聞き役、まとめ役  傾聴→要約
2、促し役          質問、自己開示
3、保護者役       
4、ムードメーカー役  
5、場の学びの促進役 自己開示
<目標に向かって真剣に話し合える場>
1、リーダー役    
2、進行役      要約→整理 問題解決プロセス、話し合いの段階
3、意思決定役     意思決定の種類、コンセンサスの方法
4、タイムキーパー役 
5、記録役       会議メモ

 さらにこの日は、ファシリテーターが時間の流れの中で、果たすべき作業についても学びました。

1、場の準備 会議開催通知をリーダーと共に作る
(1)目標を明確化する
(2)話し合い方のプランを練る 問題解決プロセス、4つの話し合いの段階
(3)役割を明確化する
(4)レイアウトを考える 会議メモが見えるように
2、場のスタート
(1)チェックイン 場をほぐす(自由で守られた場づくり) 自己開示
(2)契約 ファシリテーターとしての役割をメンバーと合意
(3)目標と、話し合い方の合意をとる
3、話し合いや作業の中での場の促進
4、場の収束とまとめ
(1)決定事項(誰が、いつまでに、何を)の明確化
(2)場のふりかえり ふりかえり用紙
(3)議事録作成(または確認)

 そして最後に、自分たちの会議の問題点を、KJ法という手法を使い親和図にまとめる問題の発見と構造化の手法を学び、実際に行いました。これも多くの人に強い印象を残したようです。



◎3日目「ファシリテーター・ロールプレイ」

 最終日は、まずフィードバック(場や他の人について、気づいたこと思ったことを自己開示すること)の仕方を学び、ロールプレイの準備をしました。
 そしてグループになって、前回作った会議の問題点の親和図をみながら、それを解決するための話し合いを行いました。ここでは、ファシリテーター役、書記役、観察者、メンバーという4つの役割を交代でにない、7回に分けて会議を進め、1回づつ、場がどうだったか、ファシリテーターの良かった点、改善点などをふりかえるという構造で学びをすすめました。

 実際回が進むごとに、メンバーのフィードバックも適切になり、より深いふりかえりができるようになっていきました。フィードバックは、私たちが大事にする体験学習のサイクル(<体験>−<指摘>−<分析>−<仮説化>)の指摘にあたります。これがうまくできることで、体験学習の質もあがり、まさに最後には学びのチームが生まれている感じがしました。
 

ファシリテーター養成講座全体のアンケート

 3回目終了後、全体をふりかえってもらいました。掲載OKの方のふりかえりです。ここからは、ファシリテーターが単なるスキルではないこと、自分らしいファシリテーターを求める姿勢が感じられ、大変だったけれどやってよかったと感じられるものとなりました。

以下6段階評価です

・満足度 評価5  
(理由)新しいことをたくさん学び、それがすぐ活かせれた
(あなた個人の期待で達成できたことは)
・30%。ファシリテーションの基本の基本を知った。(そもそもの期待がまちがっていた。少しでもファシリテーションができるようになると思っていた。)
(気づいたこと、学んだことは?)
・場を感じることが必要
・感情も受け止めることが必要
・聞き役というのはただ聞くのではなく、関わりをもって聞くことだった。
(今後役立つと思うことは)
・場を感じること、役割を意識すること、全体的なゴールやその枠組みを考えること、自信をもって発言しかかわっていくこと
・ブレーンライティングで親和図
(会社員 吉竹弘江さん)

・満足度 評価5  
(理由)ファシリテーターの役割=どういう場面でこうした方がよいがわかった
(あなた個人の期待で達成できたことは %で)
・70%
(気づいたこと、学んだことは?)
・場面でのきりかえし、ファシリテーターに協力するような場づくり
(今後役立つと思うことは)
・会社でいろいろ実験してみて場数を踏んでいく
(会社員 Yさん)

・満足度5
(あなたの期待で達成できた所)
ファシリテーターの役割で一番大事なことは、「場を感じること」であることがわかった。(ファシリの知識も必要でしょうが)
(あなたが気づいたこと、学んだこと)
・「場を感じて」どう対応するかって事の重要性について学んだ。
(今後役立つと思うことは)
・「私は・・・である」と主張すること

(会社員 Kさん)

・満足度5
(理由)ファシリテーターについての理解が、以前よりすっきりしたように感じる
(あなたの期待で達成できた所)
・役割の理解が深まった。
(あなたが気づいたこと、学んだこと)
・待つこと、しゃべりすぎないこと
(会社員 S.Hさん)

・満足度6
(理由)自分の足りない部分が解った
(あなたの期待で達成できた所)
・メンバーに対してのモチベーションを上げる方法 60%
(あなたが気づいたこと、学んだこと)
・全員の知恵を出しあう事でヤル気がかわってくる
(今後役立つと思うことは)
・職場での態度、発言、相手を思う気持ち           
 (会社員Kさん)

・満足度6
(理由)とにかく多くの時間を実習(ロールプレイ)に使われたので、より場数をふみ、経験、ふりかえりが多くできた。
(あなたの期待で達成できた所)
ファシリテーターのスキル 80%
・“場”作り 80%
(あなたが気づいたこと、学んだこと)
・情報の共有、再確認の大切さ
ファシリテーター、書記、メンバー全員での場作り
(今後役立つと思うことは)
・フィードバック
(会社員 Sさん)

最後に、参加者の皆様、スタッフの皆様、メンバーを講座にお送りいただいた皆様、本当にありがとうございました。