最近「絶望」と言う言葉が気になっていました。これはそのままで見れば否定的な言葉ですが本当にそうでしょうか。

エリクソンのライフサイクル論によると、最終の段階である老年期に訪れる心理・社会的危機、つまり葛藤は「統合」対「絶望」とされています。そしてこの葛藤がうまく解決されると「英知」を身につけていくとされています。

ライフサイクル、その完結

ライフサイクル、その完結

ここには、英知という老人期に達成できるものは、常に襲いかかる絶望との葛藤の中で生みだされるということ、つまりこの「英知」には自分が死にゆくこと、身体的にも、社会的にも、精神的にも喪失をとどめることができない「絶望」が包み込まれているということだと思います。

逆に言えばこのことは、何もかもを失わしめる老いや死もまた、それが行き止まりではないことを示しています。それを受けいれた上で、私たちは英知に至ることができるということではないでしょうか。

「絶望」を見ないようにするのでなく、それをありのままにみつめること、ここに私たちの有限性を超えた希望があるように思います。