昨日は南山短期大学名誉教授の星野欣生先生をお招きし、昼間に「職場の人間関係づくり〜ラボラトリー体験学習を再考する」というワークショップを、そして、夜に「包み、包まれる人間関係づくりを目指して」と題した講演をしていただきました。
先生は人間関係づくりトレーニングの著者としても知られています。
- 作者: 星野欣生
- 出版社/メーカー: 金子書房
- 発売日: 2002/12/01
- メディア: 単行本
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いろいろ学びはあったのですが、私が特に印象に残ったのは、概念学習と体験学習の違い、ラボラトリー体験学習のフィロソフィー(考え方)と体験学習のファシリテーターは何をする人なのかという3点でした。
星野先生は会議を回すことだけではなく、人とのかかわり方全般にファシリテーションの考え方が使えるとお考えです。
1、概念学習と体験学習の違い
(1)概念学習
これは知識(内容)を覚えこむ学習です。学校での学びの多くはこれで、全員が同じ知識を覚え、テストでそれを評価します。
(2)体験学習
これは同じ実習でも、1人1人の体験が異なり、40人いれば40通りの学びがある学習です。実習にはねらいは一応ありますが、そこ以外の部分に気づきを持つ人もいます。
ねらいに沿って1つに絞り込む必要はなく、むしろ体験から学ぶ上での、つまり感じ方や見方の「違い」を認識し、そこから関係づくりをしようとします。つまり違いを隠す「お付き合い」ではなく、違いを浮かび上がらせて、受けいれ合える関係を作っていくのです。
こうした体験学習では、テストはできません。段階評価にはそぐわないのです。
もちろん評価を否定するわけではありません。評価には基準が要りますが、体験学習が対象とする「体験、行動、態度」では基準を作ることはそぐわないことが多いでしょう。チームの皆が同じかかわりをするなら、各自の持ち味が消えてしまう強いチームにはならないでしょう。
2、ラボラトリー体験学習のフィロソフィー(考え方)
(1)個の尊厳〜非操作
このように体験学習は、あるねらい(目標)に人を引っ張っていくものではありません。私たちは善意で相手をねらいの方に導こうとしてしまいがちですが、それは操作になります。「体験、行動、態度」に焦点を当てる体験学習では、最終的に何を学ぶかは相手に任せる姿勢が必要なのです。
(2)非評価〜プロセスに焦点
また体験学習では、課題が達成されることが目的ではなく、そこで生じる関係的な過程、つまりプロセスに焦点をあて、そこで起こったことから学ぶことが目的です。したがって、どのような結果になったとしても、そこにあるプロセスから学べるならそれでOKであり、結果を評価する必要はないのです。
(3)ともにあること
体験学習は、相互援助の学びです。互いが鏡になり合って相手の行動から感じたことを伝え合いながら学んでいきます。
3、体験学習のファシリテーターは何をする人なのか
ここからファシリテーターとは
(1)プロセスにかかわる人
言い換えれば正解を与える人ではありません。これは概念学習なら成り立ちますが、プロセスに正解はないからです。
(2)場を提供する人
言い換えれば引っ張る人ではありません。体験学習の場を与え、メンバーが自由に学べる環境を整えるのです。
(3)人の気づき、成長にかかわる人
言い換えると、気付かせる人ではありません。ここでねらいにそって無理に気付かせることをしたくなっても、無理に気づかされた気づきは後で問題が起きてくることを知っている必要があります。
私たちが研修をしたり教えるとき、教示しているのか、ファシリテートしているのか、何をしているかに気づくことが最も大事だと先生は言われました。
体験学習をしているのに、ねらいに向けて引っ張ってしまう。それなら初めから教えてしまった方がいいでしょう。自分が何をしているかに気づく、これを先生は「自己フィードバック」と呼んでおられましたが、これがファシリテーターには不可欠のスキルなのでしょう。